総務省のデータでは、2025年には日本の中小企業・小規模事業者の6割以上にあたる245万人が70歳以上になるとされています。このうち約半数の127万人が後継者未定という状況です。
倒産や廃業の理由も「業況の悪化(70.6%)」に次いで「後継者不在(65.4%)」が二番目に多い結果となっており、事業承継問題の解決は喫緊の課題とされています。
「会社は誰のものか?」という質問に対する答えは、ケースによって様々ですが、法律上、会社は「株主」のものです。そして中小企業の場合、会社の代表者である「社長」が「株主」であることが多いため、「会社は社長のもの」と理解されています。いわゆる「オーナー社長」ですね。
社長が会社オーナーである場合、会社を後継者に引き継ぐ場合には、「事業の承継」もさることながら「株式の承継」も必要です。そして、「株式」は社長の個人財産であるため、個人財産である「株式」を社長から後継者に承継した場合には、贈与税や相続税などの税負担が発生することになります。
しかも、業績の良い会社ほど株価は高くなります。贈与税や相続税の計算上「財産の価額が高くなると、それに比例して税額が高くなる」仕組みになっていることから、いままで堅実に利益を積み上げてきた会社ほど、株式承継時の税負担が重くなることが問題でした。
平成30年度の税制改正で新しい「特例事業承継税制」が創設されました。実はこれまでも「事業承継税制」はありましたが、要件が厳しいことなどを理由として、ほとんど利用されていませんでした。
今回の新しい「特例事業承継税制」では、一定の手続きに基づいて株式を承継した場合、株式に係る贈与税や相続税が「全額免除」されます。また、上述した「従来の事業承継税制」に比べて、適用要件も緩和されたことから、非常に利用しやすい制度となっており、後継者への株式承継を促す契機になるのでは、と期待されています。
「特例事業承継税制」では、原則として平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に「承継計画」を都道府県へ提出することが必要です。この「承継計画」は「認定支援機関」の指導及び助言を受けて作成したものであることが要件とされています。
提出期間は5年間に限られていますので、「いますぐに株式を承継する予定がない」という場合でも、まずは計画を提出しておくことをお勧めします。(計画提出後に承継しなくても罰則はありません。)円滑な事業承継のために、ご利用をご検討ください。
PS.弊社も「認定支援機関」として登録しています。「特例事業承継税制」の利用や「承継計画」の提出についても、お気軽にご相談ください。
松橋丈雄(税理士・長野市)
受付/平日9:00~18:00
(土日祝除く)