新たに事業をスタートしたり、会社を設立した人が抱いている共通の感覚は「絶対に成功させたい」という想いだということに疑いがある人はいないでしょう。事業のスタート時に経営者の方が悩む問題の一つに「開業資金の準備」の問題があります。今回は、その資金準備に失敗しないための考え方を3つのステップでご紹介します。
事業をスタートする際に必要な資金は「設備資金」「運転資金」の大きく二つに分けられます。開業資金を準備するため、まずはこの二つの資金を見積もることからはじめましょう。
たとえば会計事務所を起ち上げる時に必要な「設備資金」の例としては、事務所を賃貸するための敷金、権利金、事務所の簡単な改装費、パソコン、プリンタ、会計ソフトの契約金、会議用の机、いす、ホームページ作成費用、応接セットの購入費、消耗品の購入費などです。業種によっては、このほか、機械設備や車両などの購入費用が必要になる場合もあるかと思います。
「運転資金」とは、事業をスタートして売上が軌道に乗るまでの間、売上げから経費を差し引いた「赤字」部分を補うための資金です。「運転資金」は1か月に必要な「経費」を積み上げて計算しましょう。
どの業種にも共通する代表的な経費としては、社長本人の役員報酬、社員やアルバイトを雇う場合には給料手当や社会保険料などの人件費、チラシやホームページなどの広告宣伝費、事務所や店舗を賃貸する場合には家賃、電気、ガス、水道などの水道光熱費、コピーなどのカウンター料金、生命保険や損害保険などの保険料などでしょうか?
運転資金を見積もる際のポイントですが、多くの場合、実際に事業がスタートしてかかる経費は、計画で見積もった経費を上回ります。1か月分の「経費」を積み上げ計算したら、経費全体の15~20%を「予備費」として上乗せすることをおススメします。
事業のスタートダッシュを成功させるためにも、運転資金は最低でも4か月できれば半年分準備すると良いと思います。事業が軌道に乗るまでの時期は不安が多いものですが、お金に関する不安はその中でも大きなウエイトを占めます。減っていく預金残高が気になって、本来やるべき営業活動などに支障があってはいけません。「半年は売り上げが無くても大丈夫」という気持ちの余裕があると、お金のことを気にせず本当にやるべきことに集中でき、当初計画した以上に事業が上手くいく可能性も高まります。
「開業に必要な資金」の全体像がわかったら、「借り入れする金額」を把握しましょう。開業資金から自分の預金等で準備できる「自己資金」を引いた金額が、借入れ等により準備するべきお金です。「自己資金と借入金の割合」は、個別のケースにもよりますが「自己資金3:借入金7」くらいが目安となっています。借入れが必要な場合には、金融機関で融資が受けられるか相談してみましょう。相談窓口としては、銀行に直接問い合わせるほか、長野県の場合には、長野県創業支援センター(長野市)なども利用可能です(もちろん弊社でも無料でご相談可能です。お問合せください)。創業融資などの場合は、都道府県が準備している制度資金を利用することができる場合もあります。
金融機関から融資を受けたら、当然ながら返済していかなければいけません。返済期間はケースにもよりますが、運転資金の場合5年間、設備資金の場合は7年間程度です。返済するお金は売上から経費を差し引いた「利益=黒字」から返していくことになります。会社を経営していて、金融機関から借り入れがある場合には「黒字を出すこと」が社長に課せられた使命であると言っても過言ではないと思います。借入返済も見込んで売上目標を立てることが大切です。
たくさん利益を出して、お金に余裕があれば、借入金を返済期間より早く繰上返済することも可能です。借入金の返済が無くなれば、残った利益は全て自分のものですから、是非、早い時期での完済を目指していただきたいと思います。
松橋丈雄(税理士・長野市)
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