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2022.03.05 | 経営

非常識より破常識

ネット環境の普及は、商売における既存の競争ルールを根底から変えてしまうようなビジネスモデルを生み出しています。例えば、モノを持たないという価値観に共感する人が増え、消費者の行動は「所有」から「レンタル」、さらには定額制サービスの「サブスクリプション」へと変化しているといわれます。

かつて車は「買う」ものでしたが、必要なときだけレンタカーを「借りる」ことができるようになり、今では「定額サービスで毎年、新しい車に乗る」という選択肢もあります。つまり、これまでと同じ製品やサービスでも、提供方法を変えることで新たな価値を生み出しているのです。それだけ消費者の価値観が多様化しているのでしょう。

非常識な発想で差別化をはかることはできますが、奇をてらった突拍子もない「非常識」よりも、常識を疑って新たな価値を創出する「破常識」な視点のほうが、多様性の時代にはマッチしているように思います。こんなことを考えるようになったのは、ある主婦の話がきっかけでした。

食品はできるだけ新しい日付を選んで買う。これは主婦の知恵であり、一種の常識ともいえます。ところがその人は、今日明日のうちに食べるものなら古い日付を選んで買うと言います。「新しい日付から買えば残り期間の少ないものが取り残されて、いずれは期限切れで廃棄処分される。古い日付から買えば処分品が減るかもしれないし、次の人は新しいのを買える」。彼女の考え方に目の覚める思いでした。

日々の何気ない行動を振り返ってみたら「そのやり方じゃなくてもいいのでは?」と思うことがいくつかあり、そのひとつが古い日付を選んで買うことだったそうです。古い日付といっても1日か2日。それを買うくらいで大げさなと思うかもしれませんが、あえて古い日付を選んで買う理由に、その人なりの新たな価値の創出を感じたのです。常識を疑う背景には、個人の発意や情熱、勇気ある決断といった「内側の発想」があります。多様性の時代の商売は、内側の発想に共鳴してもらえることが不可欠ではないかと思うのです。

 

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